アブレーションの仕事 › WPW · 2006–2026
アブレーション治療(WPW)2026年までの20年間の成績
2006年に大阪市立総合医療センター 小児不整脈科に赴任してから、2026年までの20年間に当科で行ったWPWのアブレーション治療の成績です。副伝導路の位置(左側・中隔・右側)と治療した時期(3つの期間)に分けて、治療件数・成功率・再発をまとめ、顕性・間欠性・潜在性ごとの位置の割合、高周波と冷凍の治療方法、症状のない(無症候性)WPWも示しました。アブレーション全体のデータもご覧ください。
概要
治療件数
700件
2006年1月–2026年9月、患者641人
全体の成功率
98.6%
2006年1月–2026年9月、成功690件 ÷ 700件
全体の再発率
9.6%
2006年1月–2026年9月、再発67件 ÷ 700件
2019–2026年の再発率
左側
2.5%
2006–2012年は8.4%
中隔
12.3%
2006–2012年は19.1%
右側
5.9%
2006–2012年は19.4%
3部位の合計
5.7%
再発15件 ÷ 263件、2006–2012年は13.3%
2019–2026年の成功率
左側
98.3%
成功119件 ÷ 121件
中隔
98.2%
成功56件 ÷ 57件
右側
98.8%
成功84件 ÷ 85件
3部位の合計
98.5%
成功259件 ÷ 263件、2006–2012年は97.9%
2019–2026年の再発率は、左側・中隔・右側のいずれの位置でも、それ以前の2つの期間より低くなっています。
副伝導路の位置の割合(顕性・間欠性・潜在性)
WPWを、心電図のデルタ波の出かたで3つに分け、副伝導路の位置(左側・中隔・右側)の割合を比べました。1人の患者さんを1回だけ数えています(2回目以降の治療は数えていません)。
- 左側45%165例
- 中隔21%79例
- 右側34%124例
- 左側40%39例
- 中隔22%21例
- 右側38%37例
- 左側68%126例
- 中隔17%32例
- 右側14%26例
病型ごとの成功率と再発率
| 病型 | 治療件数 | 成功率(%) | 再発率(%) |
|---|---|---|---|
| 顕性 | 341 | 99.1 | 8.5 |
| 間欠性 | 102 | 99.0 | 12.7 |
| 潜在性 | 194 | 97.4 | 9.3 |
潜在性は、右側が少ない、というデータです。あまり知られていないデータだと思います。
1人に複数の副伝導路があった場合は、それぞれの位置に1つずつ数えています(そのため位置の合計は人数より少し多くなります)。病型が記録されていなかった患者さんのうち、術前の心電図の記載から判定できた人はその病型に含め、判定できなかった12人は除いています。アブレーション1021例の論文(2006〜2018年)でも、同じ傾向でした(論文のページへ)。
位置別・期間別の再発率
- 2006–2012年
- 2013–2018年
- 2019–2026年
再発率(%)
治療方法(高周波と冷凍)
副伝導路は、ふつうは高周波(RF)で焼いて治療します。房室結節(心臓の電気の通り道)のすぐ近くにある中隔の副伝導路などでは、2016年から、凍らせて治療する冷凍アブレーション(Cryo)も使っています。700件の内訳です。
- 高周波93%648件
- 冷凍6%43件
- 両方1%9件
- 高周波
- 冷凍
- 両方
- 2006–2012年
- 2013–2018年
- 2019–2026年
| 治療方法 | 治療件数 | 成功率(%) | 再発率(%) |
|---|---|---|---|
| 高周波(RF) | 648 | 98.6 | 9.1 |
| 冷凍(Cryo) | 43 | 100.0 | 16.3 |
| 両方 | 9 | 88.9 | 11.1 |
「両方」は、1回の治療で高周波と冷凍の両方を使ったものです。冷凍だけで治療した43件のうち32件は中隔の副伝導路(残りは右側10件)で、治療する位置が違うため、成功率や再発率は単純には比べられません。
無症候性WPW(症状のないWPW)
学校心臓検診などで心電図のデルタ波が見つかり、頻拍の発作(症状)はないけれど治療を受けた症例は101件でした。副伝導路が心室から心房へ逆向きに電気を伝える性質(AP-VA)がないと、ふつうのWPWの頻拍(房室回帰性頻拍)は起こりません。
無症候性WPW
101件
成功101件、再発8件
AP-VAなし
27件
101件の27%
AP-VAあり
74件
101件の73%
位置ごとの AP-VA の有無
- AP-VAなし
- AP-VAあり
- 左側
- 中隔
- 右側
| 副伝導路の位置 | 症例数 | AP-VAなし | AP-VAあり | なしの割合(%) |
|---|---|---|---|---|
| 左側 | 44 | 12 | 32 | 27 |
| 中隔 | 25 | 6 | 19 | 24 |
| 右側 | 34 | 9 | 25 | 26 |
101件は治療記録の数です(患者さんは98人で、3人は2回治療しています)。副伝導路が2本以上あった2件はそれぞれの位置に数えているため、位置の合計は101件より少し多くなります。AP-VAの有無は、治療記録の「WPW with AP_VA」「WPW without AP_VA」の項目で判定し、この項目が空だったものは電気生理検査のVA伝導の記録(副伝導路経由)で判定しました。
集計表
治療件数
| WPWの位置 | 2006–2012年 | 2013–2018年 | 2019–2026年 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 左側 | 131 | 106 | 121 | 358 |
| 中隔 | 47 | 46 | 57 | 150 |
| 右側 | 62 | 71 | 85 | 218 |
| 全体※ | 240 | 223 | 263 | 726 |
再発件数
| WPWの位置 | 2006–2012年 | 2013–2018年 | 2019–2026年 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 左側 | 11 | 9 | 3 | 23 |
| 中隔 | 9 | 7 | 7 | 23 |
| 右側 | 12 | 10 | 5 | 27 |
| 全体※ | 32 | 26 | 15 | 73 |
再発率(%)
| WPWの位置 | 2006–2012年 | 2013–2018年 | 2019–2026年 | 全期間 |
|---|---|---|---|---|
| 左側 | 8.4 | 8.5 | 2.5 | 6.4 |
| 中隔 | 19.1 | 15.2 | 12.3 | 15.3 |
| 右側 | 19.4 | 14.1 | 5.9 | 12.4 |
| 全体※ | 13.3 | 11.7 | 5.7 | 10.1 |
成功件数
| WPWの位置 | 2006–2012年 | 2013–2018年 | 2019–2026年 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 左側 | 128 | 105 | 119 | 352 |
| 中隔 | 46 | 46 | 56 | 148 |
| 右側 | 61 | 71 | 84 | 216 |
| 全体※ | 235 | 222 | 259 | 716 |
成功率(%)
| WPWの位置 | 2006–2012年 | 2013–2018年 | 2019–2026年 | 全期間 |
|---|---|---|---|---|
| 左側 | 97.7 | 99.1 | 98.3 | 98.3 |
| 中隔 | 97.9 | 100.0 | 98.2 | 98.7 |
| 右側 | 98.4 | 100.0 | 98.8 | 99.1 |
| 全体※ | 97.9 | 99.6 | 98.5 | 98.6 |
※「全体」の行は、左側・中隔・右側の数字を足し合わせた値です(成功率・再発率は、成功・再発の件数 ÷ 治療件数)。複数の副伝導路があった治療はそれぞれの位置に数えているため、「全体」は治療件数(700件)より少し多くなります。
集計方法:当科のアブレーション治療データベースから、2006年1月1日〜2026年9月26日にWPWとして治療した700件(患者641人)を集計しました。同じ患者さんの2回目以降の治療も1件として数えています。成功は、治療の終わりに副伝導路の伝導がなくなった、または症状が良くなったものです。再発は、データベースに再発と記録されたものを数えた値です(追跡期間の長さは揃えていません)。
